pathfinder

世界を暴く

書物に傍点をほどこしてはこの世を理解して行こうとした俺の小癪な夢

読書をしていて傍線を引くとする。あるパラグラフの頭でAという情報が挙示されていて、私はそれに線を引いた。読んでいくとAにはBという下位区分があるらしく、私はそれにも線を引いた。さて、Bとは抽象的な言い方であったと著者は自覚したらしく、直後でそれはB´と言い直された。私はそれにも線を引いた。次に記述は一時後退し、Aの下位区分の2としてのCなる事柄に転じた。これはBと論理的な地位を同じくするから、Bに線を引いた手前、私はこのCにも線を引かねばならなかった。嫌な予感を覚えつつ読み進めると、著者はCにもC´とのパラフレーズを施していた。私はこのC´にも傍線を引くことを余儀なくされた。書物はそこで改段におよび、かくして私の手元には真っ赤に染まった1パラグラフが残された。