艦隊これくしょんに殺される

助けてくれ。

朝起きる。顔も洗わずデスクに向かう。艦娘たちが待っている。可愛い陸奥が出迎える。やっぱりまずい、女の子の前ではきれいにしなきゃ。顔を洗って髭を剃る。さて改めてデスクに向かう。おはよう、おはよう。出撃していた艦隊が帰投しました。

艦これというゲームは資源を使って擬人化された軍艦を戦わせるゲームである。資源は時間増加するが、それだけではとてもやっていけない。そこで寝ている間等々を利用して、軍艦たちを出稼ぎに出して資源を追加で集めさせる。具体的には遠征というコマンドがあり、艦艇が数時間操作不能となる代わりに資源を少々もらえるのだ。というわけで朝、夜の間の遠征のおかげで俺の懐は豊かになっている。ちょっとホクホク顔になる。

といって満足に浸ってる暇はない。遠征結果を3秒眺めてドックへ移る。昨夜に修復し切れなかった、こまごまとした損傷を直すのである。艦これというゲームでは、主力艦の修復には数時間下手したら十数時間を要求される。対して育成中の低レベル艦であれば、数分から数十分程度の時間で修理できる。その上で修復スペースは有限だ。自然、操作のきかない夜中に主力艦を修理し、低レベル艦の修理はそれ以外のタイミングでこまごま進めることになる。というわけで朝、俺はようやく空いたドック2枠に、10隻は連なっている小中破したザコ艦艇を順に送っていく。まずは3分で直るこいつと12分で直るこいつからだ。

3分と12分とを待つ裏でも様々なことをする必要がある。まずは補給をしなければならない。出撃していた艦隊に、燃料弾薬を補給するのだ。大丈夫、数十秒で終わる簡単な作業だ。これが終わったら日々の任務をこなしにかかる。任務一覧を呼び出して、遠征3回やろうぜ、みたいなのにチェックを入れる。そしたらさっき帰ってきた艦隊を、また遠征に向かわせる。だが今度の行き先は40分で帰ってこれる近場のところにしよう。寝てる間にやらせる8時間のものより、一回当たりの実入りは少ないが、時間当たりのパフォーマンスはよいのだ。昼は長時間遠征一回よりも短時間遠征をこまめに繰り返させるに限る。っと、無駄な考えをしてしまった。大丈夫大丈夫、ここまで一分もかかってない。さて次は、兵器開発とかにチェックを入れる。大丈夫大丈夫大丈夫、十秒かからずに終わる簡単な作業だ。で、そうしたら兵器を作る。工廠画面に切り替えて、開発窓を開いてから、燃料いくらか、弾薬いくらか、鋼材いくらか、ボーキサイトいくらかを突っ込んでガチャを回す。いい武器が出ることもあればダメなのの時もある。今日はダメだった。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫、数十秒で終わる作業である。急いで任務窓に戻って今度は艦艇建造ってのにチェックを入れ、また工廠に向かい、資源いくらを突っ込むと決め、建造を命令する。超大丈夫数十秒。さて、こなしてない任務も山積みだが今度はドックだ。3分で直る奴が仕上がってる頃だ。隙間時間が生じないようにここでドックを見に回る。折よく修理が終わっていた。次は8分のこいつを詰めておこう。修理終了がさっきの12分のとちょうど同時くらいになって都合がいい。超々大丈夫。さてさて改めて任務窓を開き……。

これを寝るまで繰り返す。それが艦これというゲームであり、艦これという生活様式である。艦これというのは、PC前に張り付いていればいるほどに効率よく進めることがゲームである。そして困ったことに、これはぜひとも効率よく進めたいゲームなのだ。そういうわけで俺は生活時間を艦これに今やますます吸い取られていて、その意味で、俺は艦隊これくしょんに殺される。

助かる方法は実は簡単である。俺は金を払って助かることができる。艦これのほぼ全行動は各種アイテムで以て一瞬にして済ませることができる。通常は遠征等々で苦労して回収するそれなりに貴重なアイテムだが（無駄撃ちしてるとすぐに切れる）、大丈夫、金で買うことができる。資源不足も同じことだ。画面に張り付いてこまめに遠征を指示せずとも、リアルマネーで資源を買える。金金金を突っ込んで、艦これは効率よく進めることが可能です。効率よく進めまして、今月の請求は云万云千円になります。なんという話だ。艦隊これくしょんに殺される。

艦隊これくしょんをやめればいい？　そんな話はないのである。なぜかというに殺人的に面白いからだ。艦隊これくしょんに殺される。

それにしても艦これが面白いとはどういうことか？

（続く）