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世界を暴く

2013年上半期ベストチューン

はじめに

大学のオタサーの人らがアニサマの妄想セトリ対決やってて、めっちゃ楽しそうでめっちゃ羨ましかったので、今更ながら上半期の総括をするのである。6月末日までに世に出たものから10曲選んだ。収録基準は特にないが(アニソン縛りも外してある)、何か傾向みたいなものはかなり嫌味に滲み出てしまったので、各自適当に受け止めて適当に判断してほしい。

水樹奈々 - Get my drift?


アルバム『ROCKBOUND NEIGHBORS』から。調べたら2012年の曲だがまあいいや。軽く聴ける佳曲。

水樹の曲には暑苦しいのとかぶりっ子みてーなのとか演歌とか色々あるけど、その中で俺が一等面白いと思うのはだいたい悪戯っぽい曲である。この曲もそうだ。うぉんちゅ、とか、べいべ、とか、いちいちわざとらしく引っかけて歌ってて聴いてて楽しい。ブリブリなベースの粘っこいうねりも最高だ(水樹曲特有の音質のアレさもこれのおかげで気にならない)。

この曲に関してはその上でさらに歌詞がまたいいのである。素直に読んでもけっこうヒドくてなかなか楽しいのだが、今の悪戯っぽさという観点に立つとさらなる楽しみも見出せるのだ。というのもこの曲なんと、悪戯っぽい女の、悪戯っぽさゆえのさみしさ・愛されなさを歌い上げたものとなっているからだ。悪戯っぽさはひとたび反転するとすぐさまストレートな叙情に行き着くというのがここにおいて示される詩的認識である。われわれはいつだってそういうのに弱い。

作曲者の加藤肇という人は謎である。

StylipS - TSU・BA・SA

これも初出は2012年か? まあCD音源化は確か今年だ。

咲-Saki-の番外の番外の主題歌。だけどそんなとこに埋もれさせとくのがもったいないぐらいイイ。何がイイって、若干音程がヨレているのがいいのである。

最近分かってきたのだがアイドル曲というのは、歌メロを歌声ではなくシンセ等々で提示するから歌声の音程が外れるということが欠点にならない。メロディは歌を聴かずとも理解出来るのだから、多少音痴でも問題ないのである。で、むしろそのことから、音程の外し方の内に各員のアイドル性なり声優性なりを発露させるという方向が生まれてくる。というのは音程の外し方というのにはその人の息の吐き方の癖が現れざるを得ないからであり、つまりはその人の喘ぎ方が間接的に示されざるを得ないからである。アイドル曲は調子はずれなほどに優秀なのだ。われわれは調子はずれなアイドルポップを聴く時、シンセリードと実歌唱とのズレの内に、アイドルとのセックスの夢を聴き取っているのだ。

でこの曲。一見すると歌メロをベタ打ちした例の下品なシンセは観察されない。にもかかわらず与えられる感興はアイドル歌謡のそれなのだ。喘ぎ声の気配がそこかしこに充満している。なんでこんなことが可能なんだ? おそらくは歌メロのリードを、シンセベタ打ちに代えて、シンセとベースとに対位法的に担わせることでこのマジックは可能になっている。面白い。工夫の効いた良曲だと思う。

作曲は82年生まれの山口朗彦。生徒会役員共の「大和撫子エデュケイション」やISの「SUPER∞STREAM」の人だ。キタエリへの曲提供も目立つ。要注目のコンポーザーと言えるだろう。

第一期StylipSといえば、劇場版AURAの主題歌もよかったので、皆さんベストアルバムを買いましょう。

栗林みな実 - 遠い夏の日

アルバム『TIGHT KNOT』の収録曲。アニメ君望の水月キャラソンのカバーである。初出時にはだから水月役の石橋朋子が歌唱しているのだが、確か詞曲とも栗林なので、今回のこれは半ばセルフカバーとも言える。原曲は下に貼るこれ。

一応書いておくと君望とは女2男1の三角関係の話であり、そしてその三角関係においてこのキャラソンに歌われてる速瀬水月と対決するのが、涼宮遙という、声優としての栗林みな実に声を当てられてるキャラなのである。超泣ける。

遙、もとい栗林の2013年版について言えば、ポイントはやはりギターのエロさということになるだろうか。ぜひ間奏部分まで聴いてみて欲しい。サポートギタリストの調子に乗ったステージングまでもが眼前に浮かんできそうな充実のアンサンブルである。抑制の利いたテンポが今聴くと逆に新鮮な感じさえするのも面白い点かも知れない。思えばわれわれはずいぶん狂騒的な音楽に慣れてしまったものである。

アルバムについて総論すれば、ここ数年のアニメタイアップをまとめたゴージャスなアルバムだった。とはいえ個人的に楽しめたのはこういう箸休め曲の方である。ハイテンションなアニタイ曲よりも栗林の歌唱に向いていると感じるのだ。

とはいえ即座に手のひらを返すと、今年の栗林は魔王さまのOPもまたよかったのだった(デジタルなハイテンションナンバーである。なぜか今回のアルバムには未収録)。

小松未可子 - 夏至の果実(Sunset Cherry Mix)

昨年末発売の両A面シングルの2トラック目の方のアルバム版リミックス(トラック1はアニメKのED)。見つからなかったので貼ったのはシングル版の方。アルバム(『THEE Futures』)に収録されたものはテクノポップアレンジである。俺はアルバム版の方が好きである。

どこがいいのかというと、陳腐だが明るさとさみしさが同居しているような感じがいいのだ。ロックアレンジのもとで聴くとよく分からない話だが、確かにそういう方向を持った曲なのである。で、もちろんそれはみかこしに一番合った方向だと思うのである。それでここに名を挙げた。

黒崎真音 - [dreamed wolf]

アルバム『VERTICAL HORIZON』の収録曲。

ネオクラ……いやダンサンブルなナンバー?……いやいや……みたいな思わせぶりな導入からのサビの真っ当な疾走フレーズという肩すかし感がナイス。

ただし詞はかなり微妙。うーん。で作詞は誰だと見てみると、黒崎真音本人なのである。あっ微妙とか嘘ですこれ最高だ。最高です。これは普通に上坂すみれとかよりサブカル女子力高いね。いや低いのか!?

『VERTICAL HORIZON』というアルバムはその点からすると紛うことなき神盤で、なんとインスト除く12曲中11曲の作詞を黒崎本人が手掛けている。謎英詞も全力全開。つーわけで川田まみとか好きな人はぜひ黒崎も聴きましょう。

Ray - As for Me

I'veの売り出し中新歌姫、Rayの1st『RAYVE』のラストトラック。KOTOKO詞の高瀬曲。めっちゃI'veである。素直な声でつるっと歌いあげてるので全然そんな気しないが、よく聴くと実はかなりムズそうな曲だ。

そのムズさが楽曲としての面白さに直接生きているのが好感触である。具体的には、表拍強勢の四つ打ちキックにハネたリズムの歌メロが絡んでくサビのことだ。音程も飛躍的・跳躍的になっててかなりの難所である。ここが面白いのだ。ユルくノッてる裏を的確に取られてスッスッとやさしい歌声を差しこまれる。高瀬一矢、まだまだ終わったコンポーザーではない。

Rayは凪のあすからでも主題歌(?)を歌ってて*1、これからメディア露出がまた増えてくと思うんだが、その凪のあすからの曲というのが悪くはないものの地味である。もったいない。この歌手に対する判断は、だから、凪のあすからの曲のみにて下されないよう祈念する。

Rayはさらにさらに、アムネシアというアニメのEDがよかったので、これもお薦め。アムネシアはやなぎなぎのOPも冴えてた。

KOTOKO - Flower!

百花繚乱エリクシルというエロゲのOP。やっぱ歌うまいよね、って間違えた。正しくはこっちのエリクシルのこの曲です。

メロディもアレンジも普通のエロゲ曲なんだけど、ずるいねぇ、声だけでオーラ爆発である。Rayには悪いけど、聴き比べてみるとやっぱKOTOKOの声質の無二性は歴然だ。

普通って言ったけど曲の方も捨てたものではなくて、間奏入りで突然プログレ化したかと思えばすぐに真顔に戻るとことかめっちゃ笑えるし(どこのサンホラだ)、ギターのバッキングにはなかなか聴き惚れる。この手の曲というのはオッサンHR調のよく言えば渋い悪く言えば芋くさい湿ったギターを伴わせてるのが相場なわけだが、これに限ってはかなりクリーン寄せなままでうまいこと軽快に(しかし軽薄にあらず!)やれてる感じがして好ましく思うのだ。アルペジオも見せびらかしとかじゃなく意義あるものと聴こえるし。

電気式華憐音楽集団 - Gemini

デンカレのエロゲ曲。イントロとか完璧。サビがぶっちゃけダサいのが惜しいが、まあここまで来るとそこまで含め愛らしい。デス声も可愛い。

唐突にまったく関係ない話をすると、妖精帝國ってバンドが出したアルバムもよかったね。

丹生谷森夏(CV:赤崎千夏) - でいなばよって☆マサリモ

ZAQ詞曲の中二恋キャラソン。タイトル勝ち。以上。

宝生柚璃奈(CV:小倉唯) - Dance on the Solitude

小倉唯がかわいい。「そりちゅーど」の発音とか超イイ。あとは特に言うことはありません。

書き切れなかったことなど

後半はまあ投げやり。

挙げ損ねたのではメロディメイカー賞でZAQのささみさんOP、アイデア賞で上坂のむろみOP。政治的思惑から名前を挙げ損ねたが、正直黒崎のとかよりはずっと楽しく聴いた。ただ上坂のはフルで聴くと色々キツいのでTVサイズに限る。アルバム単位だと高垣のもよかったがタイアップ曲以外が地味。V系は、何だろう、ナイトメアとかvistlipとか聴いてた気がする。摩天楼オペラは最初めっちゃイイじゃんと思ったけど一瞬で飽きた。サントラはサイコパスのとヴァルヴレイヴのが双璧。去年発売だけどヨルムンPOのもなかなか。入手できてないのだとジョジョのは気になってる。

年間ベストのためのメモとしては、7月以降出てきたのでシンフォギアGキャラソン群とかやなぎなぎとかが面白げなので唾つけとこうというところ。

*1:主題歌(?)」としたのは、「イメージソング」という名目だからである。多分OPは違う曲なのだろう。で、ここぞの挿入歌とかで使うわけだ。そのせいあってかアニメまだ放送してないのに早々今回のアルバムに入ってる。