pathfinder

世界を暴く

叛逆の物語二回目

ネタバレ感想です。

見方を変えます

見てきました。だいぶ見方が変わりました。

初見時俺は、百合映画として見るのダルいから、正義論として見ていくということを言ったんでした。結論から言うとこれは無理筋でした。俺が間違ってました。百合映画として見てはじめて前半後半一貫して捉えられる映画です。

百合映画として見てこそ一貫的に捉えられるとは、具体的に言うとどういうことでしょうか。これはほむらの心情変化の理解に関わります。この映画でほむらは次のように考え変えていくんですね(たぶん。まだ間違ってるかも)。これを初見時結構誤解してました。

  1. まどかの自己犠牲を無駄にするようなナイトメアメーカーは許さない。円環の理秩序に復帰しなきゃ(杏子との探検を終えた後の独白。TV本編12話Cパートの魔獣世界ほむらと同様の心情)
  2. ところがどっこい。まどかの本当の気持ちは、自己犠牲イヤだ、家族やみんなと幸せに生きたいってものだったんだ。円環の理からまどか解放しなきゃ(夜の公園、三つ編み中断時*1
  3. QBが円環の理=まどかをわが物にしようとしている。それはダメだ! 私が結界内で魔女として完結すればまどかはやって来ず、QBの試みは挫かれる。自殺しよう。
  4. 円環の理はさやかとベベを潜り込ませてた。彼女たちのおかげでナイトメア結界もQB結界も解除された。というわけで何の邪魔もされずに私は円環の理に導かれる運びとなったわけだが、この時を待ってた! 私の心は 2. にまで巻き戻ってるんだから、円環の理に叛逆しようって気になってるわけだ。私は悪魔になるわけだ。
  5. めでたく人間・鹿目まどかの情報*2をもぎ取った悪魔な私は、記憶を失ったまどかと対面する。するとまどかは「やっぱ秩序乱すのはよくないよ。。。」とか言ってアルティメット化しかかるわけだ。あれは焦ったよね。ていうか私やっちまった?

俺は 1. とか 2. とか 3. あたりでの行動を、まあさすがにその原因はほむらの心情だってことは分かってたぜと負け惜しみを吐いておきますが、ほむらの心情を無視して「人間の好奇心」とか「世界選択の倫理」に引きつけて後付け的に正当化しようとしてたわけです。

でもまあそれが無理筋でしたね。結局、 1. から 5. までを統一的に理解するためには、まどかの思いってものの値打ちをバカバカしいまでに釣り上げなきゃいけないですよ。要するに百合的に見るしかないということであり、ほむらの心情にノるしかないということです。

で俺はほむらの心情にノれないんでこの映画……ってことはどうでもよくて、ま、ノれないにしても完成度高いなということは見落としてた 2. の描写突きつけられて思いました。でも脚本としては普通に 3. の挟み方が変というか邪魔なんで(もちろん必要な事態なんだけど、ほむらの内面劇においては据わりが悪い)、そこはどうなのかなとは感じます。評価は保留で。

魂の概念について

これについても見解を曲げます。俺は以前、新編とTV本編とを整合的に解釈するためには、同一人物(外形と記憶についての)の魂が二つ(以上)要求されてこざるを得ないと主張しました。この主張は依然擁護可能だとは思っていますが、しかし強力な代替説明を思いついたので、俺はそっちに乗り換えることにします。

代替説明ってのはどんなものか。単純に、(例えば)魔女世界のさやかの魂が、魔獣世界に転生*3して、その後消滅して円環の理世界にさらに転生すると考えるという方向です。マミさんや杏子の魂については、魔女世界から魔獣世界の改変の際に、「魔女に殺された」という因果が消滅したので復活・転生し、したんだけれども魔獣世界ではまだ消滅していないので、新編時点ではまだ円環の理の中には迎え入れられてないとします。この解釈はかなりマトモだと思います。さやか・ベベの特別扱いとか、むしろより自然に説明できるし。

この説明ルートをしかし俺は以前検討して棄却してもいまいした。円環の理が時間性を帯びてしまうという難点(?)が生じると思ったからです。新編時点での円環の理の中に、さやかは「既に」入っているんだけどマミさん・杏子は「まだ」入っていないということにすると、TV本編12話のまどかの願い、「すべての魔女を生まれる前に消し去りたい。すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女をこの手で」と整合しなくなると思っていたのです。

でも、少し考えたら両者は別に両立可能だったので(図描けばそんなにヘンじゃないと分かると思います)、わざわざ自然な説明を退ける理由は消滅してしまいました。うーむ。

他、雑多な感想

ほむらの能力ってこれまでは物理的な力ゼロだったわけだけど、なんか今回、花枯らしたり(三つ編み中断時)、花生やしたり(魔女化時)、頭から花が生えてたり(魔女形態)、桜満開にさせたり(悪魔時)、そういうパワーを行使してた感があるよね。まあ象徴表現なのかもだけど、なんかお花系の能力を手に入れたってーならそれも面白いかなと思います。

正義論としては、まあ義務論者ないし原理主義者ほむらって見方がいっそう確定したのでその点はガッツポです。でもやっぱメタ正義論が無いよね。以前俺は、「どのようにしたら私たちは正義に関する事実を認識できるだろうか?」って問いに「良識により」ってナイーヴな答え返す*4って点でまどマギ批判したんですが(というのは嘘で、混乱してたんで、今のように整理できる話を違う言葉で書いてますが)、ほむらはいっそうひどいです。愛だからね。愛ですか。この線でまじめに見るのはキツいでしょうね。

ほむらの使い魔、なんか5人だけエリート(喪服組)がいたけど、あいつら何なんだろう。

ナイトメア世界、魔法少女組以外の住人は基本的には偽物なわけだけど、クラスメイトに何人か顔アリの男がいたよね。そして設定によれば、顔アリの奴らってのはほむらが浸透膜の選択的透過性を使って外界からわざわざおびき寄せた魂だということらしい。ということは、えっ、あのモブ男ども、ほむらがわざわざ呼び寄せたお気に入りなのかっ!? って思ってビビったけど、クレイジーサイコレズ的に考えるに、むしろライバルたる女クラスメイトどもを選択的に排除してナイトメア結界造ってるんだろうな。

時が止まってるのに銃の弾がちょっとだけ進む。これ何なんでしょう? 硝煙伝いにほむらに接触してるから発砲直後だけは時間停止無視できる。そんな感じでしょうか? だとしたら発砲煙モワモワなマスケットの人の方が圧倒的に有利だ。

熱平衡からの希望絶望平衡からの、愛が出てきたわけです。愛こそが奇跡の力だったわけですね。でも奇跡とか都合良すぎますから、続編はどうせ憎しみの話になるでしょう。バランスさせるに決まってます。最後QBの目が超ドス黒くなってたから、あいつが憎しみを持つ話です。

と言いつつ俺は奇跡を信じてますよ。最後は愛が勝つかもしれない。そうも思っているわけです。

*1:ここで、たぶん超自我の寓意表現だと思うんだが、飛行船のサーチライト、これをにらみ返してるのがいいですね。

*2:そう、ほむらが奪ったのは「まどかの人間だったころの情報の一部」だとかそんな内容のセリフがあったわけです。俺的にはかなり納得行くものでした。ほむらはまどかの魂をもぎ取ってきたわけじゃないんですね。まどかの情報を盗み取ってきただけだと。何が納得行くかというと、これで一人お茶会とかもよく分かる気がするってことです。あの場面とかでのほむらはたぶん、脳内でまどかメモリーを再生してて、それを相手にお喋りしてるんですよ。きっと。スタッフロール後の一人ダンスもそうかもしれない。

*3:正確には世界が切り替わっただけなので転生でも何でもないが。

*4:ただし、「どのようにしたら私たちは正義に関する事実を認識できるだろうか?」って問いに、鹿目まどかが「良識により」と答えているかどうかも実は疑わしいです。11話とか見ると分かるように、まどかは結構冷静に功利計算してあの結論を出しているフシがある。それらのことから最近では俺は、まどかはQB以上にQB的だったんじゃないかという風に考えたりもしています。すなわち彼女は、メタ正義論(「正義という語の意味は何か?」「正義に関する事実はどのようにして認識できるか?」)に関しては良識とかではなくて自然主義的に応答し(「正義とは最大多数の最大幸福である」「最大多数の最大幸福とは自然科学・社会科学によって認識されうる事実である」)、その上で正義の具体的実現のために12話での行動を取ったのかなと見るわけです。