pathfinder

世界を暴く

ハピメアFDのOPいいね

ひさしぶり。最近は本を読むための本を読むための本を読むみたいな生活で、すっかりまいっちまって文字だけの夢を見る。文字だけ、というか言葉ないし命題だけが脳裏に浮かんでは消えてく抽象的な夢を見るわけだ。ジャーナリズム科学めいた説明をつければ俺もすっかり左脳人間になり果てましたということなのかもしれないが、しかし精神の砂漠で文字だけで見るその夢の内容ってのが相も変わらず美少女と世界の果てまで逃げていくってものなんだから、まだまだ俺のロマンティシズムは健在だ。

そんな俺の心を捉えるエロゲOPが折よく出てきてくれましたよ。ハピメアFDのやつだ。

何がいいってまず曲がいいのである。橋本みゆきは最近俺の中でかなりキてるんだが、今回のこれでますます好きになってしまったかもしれない。シリアスネスもシンセリティも即座に嗤い飛ばすことを習い性としてしまった文化相対主義者のわれわれであればこそ、唯一このような国籍不明出自不詳な音たちだけは屈折を挟まず感受することができる。ガンダムSEEDコードギアスの国際感覚のなさこそが逆に愛らしかったのと同じように、スカポカ打ち鳴らされる謎打楽器の響きにいまは何も考えず身を委ねていたい。そういえばガンダムSEEDでもコードギアスでもエスニシティ不明なエスニックアレンジ(!)が音響面を特徴づけていたことに、われわれはいまさら思い至るかもしれない。

ムービーも素晴らしい。意匠と色調における統一の裡にわれわれは明晰かつきめ細やかな注意を看取するだろう。加えて言えば撮られているもののみならず撮り方もいい。ページがめくられ扉が開かれるという視覚体験によって画面の奥へ奥へと視覚的注意の方向を向けるわれわれは、まっすぐにこちらを見返してくるヒロインたちと見つめ見つめあう関係に入る。視線の正対と性的魅力の発露という要求に二つながら応えるためヒロインたちの身体は複雑に奇妙な冒険を行っているが、この不自然さこそむしろ称揚されるべきであるということはこのOPムービーを堪能するうちに理解されてくる。この相互的凝視によって与えられた視覚的オリエンテーションこそは、サビ以降導入される横軸を使ったドラマにわれわれを没入させてくれるわけである。すれっからしのわれわれはドラマとかいまさら興味持たないが、のめり込まさせたと思えば突き放してくる映像の魔術に絡めとられては話が異なる。見たくないものから目を背けることを覚えた汚れちまったわれわれだけど、覚めない夢に囚われたならピントを外すこともできない。回るリールに巻かれたフィルムがどんなドラマを見せてこようが、シリアスにシンシアにそれと向き合ってく他はないんだ。

世界の果てまで美少女と逃げてく夢を見るってさっき言ったがあれは嘘だ。正確には世界といって、内面世界の奥底に俺は美少女と逃げるんだ。紫と黒とからなる抽象的な背景に彩られた空間の中に敗北の履歴は命題の形で直接飛来する。それに貫かれて訳も分からず苦しむ敗残の俺にしかし語り掛けてくれる声は残ってる。その声の主の姿は見えないけど、黒と紫の渦巻の奥から、金色の音声は確かに降ってくる。俺はその音声を握りしめて、反時計回りのメールシュトロームの、さらに奥へと逃げていくんだ。それを世界の果てと言ったら嘘になるけど、どこかここではないところに行けさえすればいいというのは本当だ。一所に蹲った自己の敗残を俯瞰させられることだけが俺の恐怖だ。だから破滅に向かって酒を喰らいながら俺はわるいわるい夢を見るんだ。