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世界を暴く

ヴァルヴレイヴ、オタクのプロダクトデザイン

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革命機ヴァルヴレイヴについてはロボアニメとしてクソだって批判があります。批判者の声をよく聞いてみると、とりわけリアルロボットの文法を無視しまくってる点を叩いてることが多い気がします。この手の人々からする批判の焦点の一つとなるのがヴァルヴレイヴのメカデザです。

確かにロボットとしてのヴァルヴレイヴはサンライズメカのくせにあんま「リアル」じゃないです。ボトムズとか08小隊とかに放り込んだら浮きまくること請け合いです。あんなキラキラテカテカした兵器で戦争ができるかよ、軍人があんな兵器造るかよ、という話です。

でもこの批判はちょっと的外れだと思います。だってリアルを言うならば、ロボットを造るのは軍人じゃないからです。ロボットを造るのはエンジニアです。つまり工学部とか出た人間ですから、十中八九オタクです。そいつらが造った結果として、ロボットってのはリアルを言えばめっちゃオタクっぽくなるはずです。

俺は研究学園都市という恥ずかしい名前の街で育ったんですが、そこで見たことを言えば、ロボットというのはATやMSというよりはヴァルヴレイヴのように造られるだろうということです。というのは研究所見学に行くと大抵、愛想笑いの下手なおじさんが、爛々と輝かせた目で次のように話しかけてくるからです:「このコンピュータの名前は、知ってるかな、『2001年宇宙の旅』っていう映画のネ……」。ヤタガラスの意匠とか「 霊 長 兵 器 」とか「 硬 質 残 光 」とかも、そういうのに照らすとむしろ「リアルロボット」よりもリアルなんじゃないかと思えてくるわけです。

無論ヴァルヴレイヴ劇中のヴァルヴレイヴは曲がりなりにも軍用兵器なんですから、リアルのリアルを言うならば、度重なる入札とか厳しい要求仕様とかで角の取れた設計になってくってのはあります。現用兵器がそうであるように。そしてまたエンジニアリングチームのメンバーはエンジニアだけじゃないってのもリアルのリアルです。ロボが造られる時にはオタクがオタクっぽいデザをするというのは、リアルのリアルを言えばかなり怪しいです。だからまあ、ヴァルヴレイヴは「リアルさ」という賭金を巡って「リアルロボット」とこれ以上争い続けるのは得策じゃないです。でもいいんです。既に「リアルロボット」の非リアルさは一視角から示せたはずですから。

でも、じゃあ、あのめっちゃオタクくさいデザインは結局どのように正当化し得るでしょうか? なお次のように言うことができると思います。すなわち、「『妄想してた通りの兵器』というオモチャを手に入れてはしゃぐオタク」ってのをやりたかったから、逆算して、ヴァルヴレイヴはあのデザインなのです。

このことを確認するには、最近のオタメガ君(霊屋ユウスケ君)のキレっぷりを参照すればいいです。二期に入ってからの彼はキてます。喋るセリフすべて名ゼリフというキレキレの名脇役です。それというのも新兵器開発(や工兵任務)で輝ける場を獲得したからでしょう。「妄想してた通りの兵器」を意のままにできるという全能感が彼を生気溌剌とさせているのです。それもこれもヴァルヴレイヴというメカたちが、オタクの妄想そのものな造りをしてるからです。オタクの妄想全壊なメカデザを押し通すってことには、このように、キャラクターを輝かせるという意味で脚本上の合理性があるのです。

まとめます。「リアルロボット」派によるヴァルヴレイヴのメカデザ攻撃は、第一に彼らが依拠している「リアル」の内実がそんなリアルでもないぜって点で、かつ第二にオタクいデザを採ることから来る脚本上の合理性があるって点で、不当なものだと思います。ここまで俺はそのように論じてきました。

最後に、最初に画像を掲げた「ヴァルヴレイヴI最強形態」について書いときます。黄金のくちばしっぽいのを付けた鳥みたいなパーツは実際鳥型メカとして分離可能な子機で、愛称を「使い魔」と言います。ヤバいセンスですね。ヴァルヴレイヴってのは熱が溜まると機能停止してしまうメカなんですが、この「使い魔」の銀色の羽根を使い捨てヒートシンクぽく使って、行動時間延長できるぜって寸法です。それをたくさんくっつけたから最強形態です。

ダサく見えますか? 見えるかと思います。俺も最初見た時(うっわダサッ……)って思いました。でもねでもです、これはオラザクなんですよ。設計思想がオラザクなんです。オタクがはしゃいで、ついつい過剰な機体を捏ねあげてしまった。そういういわば自意識の鬼子としてこのデザインは解釈されるべきだと思うんです。ほらそう思うと、なんかあのゴテゴテした感じが、急に愛らしく思えてきませんか?

当ブログはこれからも革命機ヴァルヴレイヴと霊屋ユウスケ君を応援していきます。

(補記:このエントリの書き手としては困ったことに、このヴァルヴレイヴ、ジオール〔≒日本のメタファー〕のオタクが設計したってよりは、古代文明? とかそういうの? の遺産みたいな感じとして処理されていきそうな気配があります。本編の展開的に。そうなってしまうと以上の論の過半は崩壊するので、頼むから変な大風呂敷やめてくれーって俺は祈ってます)

(補記の補記:まあ、そもそもオタクとかまったくいなさそうなドルシアの軍人が「殲滅出力」とか言い出した時点でこの論は破綻してるって話はあります。破綻した深読みの記録として読んでください……)